素敵な企画をありがとうございます。
『セフレの別れ話で媚薬』で参加いたします。
遅刻で途中ですが2時間ぶんがんばりました!

〇〇●


 しまった、と思った時にはたいがい遅い。
 

『セフレの別れ話で媚薬』


 その一、別れ話は人前で。
 その二、時間は区切るべし。
 その三、「最後の一回」には絶対頷いちゃいけない。

 卓上で握られた手を振り払い、逃げ込んだ個室で別れ話三原則を繰り返す。
 特に三番目が大事だ。最後の一回は絶対に駄目だ。自分よりも強い相手がしおらしい態度を見せたところで、うっかり絆されたら頭からばりばり食われてしまう。それも悪くないと思っていたから関係を続けていたのだけれども、イージーな肉体関係はハードな現実の前には無力だ。いつまでもやり過ごしているわけにはいかない。現実には立ち向かわねばならないのだ。手に手を取り合い、隣に立ち、支える人間が必要だ。
 深呼吸で気持ちを整える。
 席にいるのは、これから里長になろうとする男なのだ。そんな人間が伴侶も持たずに男とよろしくやっているなんて、外聞が悪いにも程がある。一度得た熱を手放すにはあまりに惜しいが、いつまでも瞬間の高揚に逃げているわけにもいかないだろう。お互いに。
 切り捨てるのも、愛情だ。
 平手でごしごし顔を擦り、両頬をぴしゃりと張って気合を入れる。
 席に戻ると、カカシさんと飲みかけの酒が俺を待っていた。
「おかえり」
 カカシさんは少しばかり悲しそうに笑って、手酌で酒を注ぐ。ぐいと飲み干して徳利を俺に向けてきた。気づまりな別れ話を切り出すのにやたらと酒を消費したせいで、もう飲みたい気分じゃなかった。でもカカシさんは困ったように首を傾げた。その表情に、俺は弱い。
「これを飲んだら元通り、ね。上司の酒が飲めないなんて言わないでよ」
 茶化す声音はいつもの通りで、上司という言葉から、提案が受け入れられたのだと安堵した。固めの盃ならぬ別れの盃、おしまいを二人して飲み込んで、次に会う時は彼は上司で自分は部下だ。寂しさを押し込めて笑顔で受ける。なみなみ注がれた酒を一息に飲み干したのだ。
 つくづく、甘かった。
 
 落っこちるように目が覚めたら知らない場所だった。うすら寒いのに体が芯から熱い。知らないにおいと背中に直接触れる敷布の感触、五感が一斉に違和感を訴える。
 動悸。
 息切れ。
 眩暈。
「ああ、起きた?」
 視界に割り込んだ銀髪で、状況を理解した。理解はしたが、受け入れたくない。こんなに自分が馬鹿だったなんて。
「……おれに、なにしました」
「わかるでしょ?」
「あの、さけ」
「そーそ。前に試したことあるもんね」
 むきだしの胸を白く長い指がたどる。それだけで震える自分のあさましさにほぞを噛む。一服盛られたんだ。
 酒席の途中で席を立つなど迂闊だった。まして相手は凄腕の上忍。自分よりも一枚も二枚も上手の相手に別れ話を切り出して、無事に帰れるはずがなかった。まあ多少の問答程度で収まるだろうと楽観した俺が愚かだったのだ。
 動悸息切れ眩暈。ご老人でもあるまいに我が身へ起きた変化は、薬物由来に他ならない。綺麗さっぱり抜けるわりには効果は抜群かつ速攻で、それを知ってるのも彼の言う通り、使ったことがあるからだ。あの夜は酷かった。どれだけイっても終わらなくて死ぬかと思った。
「最後に一回、ってお願いしたって聞いてもらえなそうだったからさ。勝手にさせてもらいました」
 カカシさんが薄笑いを浮かべる。意地の悪い顔だ。絶望に囚われる。
 この顔をされたら、もう逃げられない。掠れ声も出ないくらい泣かされて、足腰が立たないくらい突っ込まれる。
 震える後孔に指先が触れる。条件反射のように粘膜のあわいがあさましく開き、軽く押し当てられただけの指先を求める。「素直だねえ」と揶揄うように円周をなぞりながら、カカシさんは喉奥で笑う。
「こっちもがちがちだね。涎垂らしてる」
 ぬるりと忍び込んだ指に刺激されて、簡単に前は固くなる。握り込んで雁首をひっかき、溢れ出た雫に道筋をつけるように幹へなぞり下ろす意地悪な指。嫌になる程、気持ちいい。
「ひどい、なん、で」
「んー、俺もね、反省してるんですよ」
 反省? この男には何とも似合わない言葉だ。
「なに、を」
「教育が足りなかったんだなって。こっちの穴はさ、しっかり俺に懐いてくれてるけど。あんたのでっかいちんぽをほっといてた。もったいないことしたね。あんたは俺じゃなきゃダメなんだって、もっとちゃんと教えてやるべきだったんだ」
 腹の上に乗り上げたカカシさんはローションを俺の胸へ垂らす。固めの粘液がどろりとわだかまったところをわざとらしく乳首を引っ掻きながらぬるぬるかき混ぜ、ぬらりと粘液で光る指先をこれ見よがしに目の前で開き、糸をひく様を見せつける。体温を帯びたぬめりをカカシさんがゆっくり自分の後ろ側へ持っていくのを、信じられない気持ちで見ていた。

「あああもう、やだ、やだああ!」
「ん、っふ、ああ、いいよせんせ」
 ひどく熱くて、狭くて、気持ちいい。逃げたくて仕方ないのに、意地悪な長い足は俺の胴に絡まって、踵で強く腰を押す。引けた腰を逃すものかとばかり押さえつけられ、そのたびに堪らない刺激が根本から先端までを絞り上げる。
 頭がおかしくなりそうだ。
 大きく広げたカカシさんの足の間に囚われて、気づけば泣きながら腰を振っていた。
 口で扱かれたことは、ある。唾液をいっぱい溜めていやらしい音を立てながら俺のちんこをしゃぶり、美しい顔が歪むのが好きだった。敏感な先端を嬲られながら後ろをぐちゃぐちゃにかき回されるのが好きだった。
 でも、こんなの知らない。舌が絡み上顎を舐め上げ、カカシさんの中がぎゅっと締まる。
 食い尽くされる。
 飲み込まれる。
 組み敷いたカカシさんの白い肌に朱が上り、艶を帯びた目元はぞっとするほどの色気を湛えている。
 両膝に手をかけて大きく割り開き、奥に叩きつける。背骨からつむじまで快楽が電流となって走り抜け、応えるように狭まる腸壁に絞りあげられてあっけなく吐精した。
「あー、気持ちいい。最高だよ先生」
 吐き出した精の余韻で痙攣する背中から腰にかけてをカカシさんの手が優しくさすり、こぼれた涙をあたたかい舌が舐め上げる。尿道に残ったぶんまで吸い出すみたいにカカシさんの中がうねって、強い腕に抱きしめられた。
リバなのに…いや、リバだからか…?カカシさんに気持ちよくされちゃうイルカ先生がとっても可愛くて最高です…!
  • レピドプテラ
ご投稿ありがとうございます!
受けても雄々しいカカシさん格好いい!!先生に媚薬を飲ませる姑息さも最高です。滾ったー!すけべ最高です。ありがとうございました!
素敵な企画をありがとうございます!
『セフレの別れ話で媚薬』で参加させて戴きます。


 最初は合意があったなんて、とてもじゃないが言えない状況だった。
 任務地での上官を慰めるお仕事。そういうものは数年前まではよく聞く話だった。時代がよくなった、と言えばそうなのだが、今ではそんな因習は存在しない。
 その頃を経験した忍は割り切れる者とそうでない者がいる。自分は前者だったんだろう。でなければ、今更この男とセフレなんてものになるはずがない。

「別れてくれません?」
「……出会い頭にまず言うことですか?」
 とにかくこっちへ、と人目につきやすい廊下から人気のない資料室へ銀髪頭の上忍を引っ張り込む。自分の方がそういう目に遭うことが多かったから、妙に感慨深い。
「大胆ですね」
「…なんで嬉しそうなんですか……」
 それを言うならほぼ毎度、自分をどこかに引きずり込んでいるカカシの方が大胆ということになるのだが……いや合ってるな。
「それで、なんです?」
「うん。今日で別れようかなって。今から空いてる?」
「…なんか、前半と後半の内容差が激しい気がするんですが……いえ、いいです」
 なんやかんや言ったところですることは変わらないのだ。
 仕事は終わっているので後は帰るだけだ。そう告げたら手を差し出される。そこに自分の者を重ねるのもこれで最後……けれど先程のような感慨は感じなかった。

 前言は撤回しよう。
 割り切れるはずがないのだ、あんな鮮烈な体験を。
 自分を犯す相手の顔は、それは美しかった。白磁の膚が、体温が上がって徐々に赤みへ染め上げていく様はこちらの脈拍を速めた。淡々とした表情の中に、少しの痛みと、快楽の狭間で揺れる理性が見える。眼を閉じればすぐに思い出せるそれらは、本当に息を止めるほど――。

「では、今日で最後に」
「ん」
 彼の家へと術で飛び、実にあっさりと交わされた終わりの言葉の後、交代で風呂を使うことにした。先に入ったのはカカシだ。
 カカシとは決められた手順でベッドに雪崩れ込む。
 まずイルカのもとにカカシが現れて、都合がいいかを確認されてから手を差し出される。都合が悪いならそこで拒めばいい。まぁ断ったことは無いのだが。
 思うにカカシはイルカの都合をある程度把握してから誘いに来る。まめであるし、そういう気遣いをするから揉めたことも無い。
 乱暴をされたこともない。最初をカウントしてしまうと微妙なところだが、行為自体は丁寧だったんだろう。媚薬入りの潤滑油を使われたので身体は快楽ばかり拾っていたが、翌日違和感は残るものの大して痛みも感じなかったのだから。
(……ああ、そうだ)
 勝手に最後にされてしまったのだから、最初を彼に返そう。
 カカシが風呂から出てくるのを、いつも棚にある本を勝手に読んで待っている。今日はそのいつもから外れて、彼が装備品を仕舞っている部屋へと足を向けた。イルカはカカシがどこにあの時の媚薬を仕舞っているか知っている。それくらいにはここで過ごしたのだ。
 小瓶に収まっているのは色の無い液体だ。揺らせばとぷりと粘度を感じられる動きをし、蓋を開ければ微かに花のような匂いがする。実際ある花から作られるらしいから、その匂いだろう。
 カカシと交代に風呂へ向かう時はまだそれを持ったままで、用意がすべて終わってから、彼が待つベッドの上で初めてそれを差し出した。
「これ使いたいの?」
「ええ。あなたに」
 んー? と笑んだまま首を傾げるカカシは、すぐに察したようで今度は妖艶な笑みを浮かべてみせた。
「俺を抱くの」
 まるで正解を導き出した子供を褒めるような、そんな音を紡ぐくせに、その眼はしとりと濡れて色を放っていた。


「…ん…、そこ、」
「ここ…?」
「ふ……、うん、きもちいい……」
 いつもはそれどころじゃないのに、今日に限ってやたらと衣擦れの音を耳が拾う。カカシの開いた足が揺れる度に奏でられているのだと思うと、ひどく胸が高鳴った。
 潤滑油をしっとり注ぎ込んだカカシの後孔にイルカの指がうずまり、彼のいいところを探す。そこで知ったのだが、カカシはどうやら慣れているらしい。腿を、腰を、口を使ってカカシの悦いところへ誘い込んでイルカに教えてくれる。初めて知った。こんな、このひとを。
 それがまぁ、なんというか実に面白くない。
 顔にはっきり出てしまったんだろう、カカシはイルカを見上げてきょとりとした直後、ふはっと息を吐いて笑った。
「もうさ、いいから……早くイルカせんせいをちょうだい」
 くい、と招く足先がイルカの腰を撫でて誑し込む。それだけでもうイルカの手で蕩けていくカカシを前に臨戦態勢だった半身が暴発しそうで、ぐっと奥歯を噛み締めた。不意打ちはやめてほしい。
「えぇと……いただきます?」
「ぶふっ」
 こんな時に笑わさないでよ、ところころ子供みたいに笑ったくせに、やっぱり次の瞬間には蜜でも滴るんじゃないかと思わせる、色香を乗せた視線をくれるのだ。


 カカシを抱くのは、夢のような時間だった。
 イルカは非処女だが、童貞だった。まさかどちらの初めてもカカシで経験することになるとは思いもしなかった。
 彼のなかはとにかく熱くて、やわらかくて……こんな言い方が合っているのかわからないが、やさしかった。イルカを受け入れてくれていると感じられる。
 拙い腰使いだろうに、突き上げる度に息と掠れた声を零してくれる。好いところに当たったなら、気持ちがいいと抱きしめて頬にキスをくれる。背中に爪を立てられた瞬間、痛みと共に走り抜けたえも言われぬ感覚が腰を突き抜け、カカシのなかで精を放ってしまった。しかも続けて。
 唐突に、今見ているカカシはいつも彼が見ている自分じゃないのかという考えが過ぎって、顔が燃えるように熱くなった。それはつまり、今感じているものが自分を抱いているカカシが感じているものと似ていることにもなるのではないか。
 イルカの中には今、自分の為に身体を開いて、いいと喘いで感じてくれているカカシへの愛しさでいっぱいだ。なぜこんなにも鮮やかな感情を見過ごしてきたのだろう。
 愛せることに胸がいっぱいになって、そうしたら愛してほしいと心が喚きだす。心の次に、身体がざわめきだす。
「イルカせんせ……ねぇ、今すごく、あなたを抱きたいんだけど」
 いい? と尋ねてくる声に返すより、彼のなかから己を引き抜く方が早かったかもしれない。離れた直後に位置が反転してベッドに沈む。
 覆いかぶさってくるカカシはいつもと違って、抱かれた後の艶めいた表情をしている。濡れた唇に眼が惹きつけられ、誘われるままに吸い付いた。ふ、と楽し気な音が彼の鼻から抜けて、いつの間にか自分の後孔には彼の指がうずまっている。
 すぐに蕩けた身体は嬉々としてカカシを受け入れ、イルカは常より感じ入り乱れた。馴染んだカカシの腰使い、奥を穿つ肉の存在に耽溺する。
 そして逐情する間際にカカシが、腰を振る度にさっきせんせいがなかで出したものが零れてくる、とうっとりした表情で囁き落としてくるので、脳が真っ白に焼かれて落ちたのではないかと思う、強烈な快感を味わった。



「あの……大丈夫、ですか…?」
 事の後、カカシの酷使された腰を撫でながら尋ねる。与えられる快感の強さはカカシの方が深いものだろうが、イルカはカカシに抱かれることに慣れた身だ。拙い技巧の自分に抱かれたカカシの方が、身体への負担は大きいだろう。――その後の動きの方が明らかに長かったし激しかったような気がするが。
「ん~、腰撫でてくれて気持ちいいしこんなに気遣ってくれるなんて、イルカ先生だめだよ俺以外にそんなことしちゃ」
「……いや意味がわからん」
「だってモテるじゃない。だめだめ俺以外にモテないでよ」
「今から別れるのに!?」
 一生俺に独り身でいろってんですか、と眼をかっぴらいて言えば、カカシは笑顔で頷いたうえ、首を横に振った。いやどっちだよ。
「まぁそういうことなんだけど、独り身は寂しいから俺の傍に居て」
 俺も寂しいし、と宣うひとがだんだん宇宙人じゃないかという気分になってきた。なんというか、話が通じているようで通じていない気がする。
「先生のセックス、やさしくて好きだよ」
 嫌じゃないならこれからは俺のことも抱いてね、とにこにこ告げてくるので、飛び出したんじゃないかってくらい眼が開いて丸くなった。眼球が痛い。端からばりばり剥がれてくるような気がする。
「えっ、いやだから別れ…?? 別れ…ましたよね??」
「セフレはね」
 そこで、がつん、と頭を殴られたような衝撃を受けた。
 セフレとは、別れた。決別した。つまりそれは。
「……俺を離す気は、ないということですか?」
「そりゃそうでしょ。どのツラ下げてあんなことの後にセフレになってって頼んだと思ってるの」
 そう言われて、すとんと胸にあったものが腑に落ちる。なぜわざわざ自分に声を掛けたのだろうと思って、でも尋ねるなんてしなかった。これならばしておけばよかったのではなかっただろうか。
「だいたいね、俺の処女を奪っておいてただで済むと思ったの?」
「……それをあなたが言いますか……ああ、いや……そうですね」
 あなただから。だからこそ、それを言えたのか。
「お互い様でしたか……あっ」
「なぁに?」
「さては……謀りましたね!?」
「ははっ、どうだろうね?」
 いや絶対にそうだろう。だって今までに見た事がないくらい、心の底から楽しそうに笑っているじゃないか。
「ん? あれ、ちょっと待って下さい……カカシさん、初めてだったんですか!?」
 あんなに指を呑まされるのも、悦所へ誘い込むのもうまかったのに信じられない、と顔に出まくっているのが自分でわかる。カカシはついに吹き出して腹を抱えるほど笑いだした。
「くっ、ははっ…、見事に騙されてくれたねぇ……そ、初めてだったよ。抱かれるのも、抱くのもね」
「はぁっ!?」
 寝耳に水とはこのことだ。まさか抱いたのも初めて、ということは……過日の、あの任務地でのものが、初めて。それはイルカも同じことで。
 イルカが吃驚にぽかんとしている間、カカシは暗部に配属される前に色の訓練もしたのだが、結局そっちより戦闘の方が圧倒的に役に立つと判断されて今まで使い道がなかった、けれど真面目に訓練しておいてよかったと上機嫌に話していた。
「……カカシさん、乙女なんですねぇ」
「ふ、そうなの」
 奪うのも奪われるのも、その相手は唯一人にするだなんて。
「めちゃくちゃ熱烈な告白じゃないですか」
「そうー。だから、たった今から俺たちはセフレじゃなくて恋人ですー」
 よろしくね、と茶目っ気たっぷりにウインクを飛ばしてくるひとは、珍しく左目を開けていた。いや左目を開けていないとウインクしたことにならないのだろうが、常に起動状態の眼は瞼を上げればチャクラを消費し始めると言っていたのに、何をしているのだこのひとは。
「ちょっ…! 目、閉じて……うわっ」
「なぁに、キスでもしてくれんの?」
「ぬおおおおまたたばかったなぁああああっ」
「はははっ!」
 慌ててカカシの眼を閉じさせようとした自分は、まさしく飛んで火にいる夏の虫だったのだろう。近付いたところを羽交い絞めにされて一緒に布団へ転がった。
 まぁ楽しそうに笑ってくれているから、別にいいのだけれど。
「はぁ……恋人って、何すればいいんでしょう?」
 されるがままになっていると、カカシはイルカを腕の中でくるくる回しながらあちこちにキスしてくる。すごく、とても、喜んでくれているみたいなので、本当にいいのだけれど。そろそろ目が回りそうだ。
「んー、そうね。まずはセックス以外のこと、一緒にしない?」
 やっと止めてくれたカカシはふっとやさしい笑みを乗せて、回されたせいで髪が乱れに乱れすぽんと丸見えになったおでこに、むっちゅー、と可愛らしいキスをしてきた。
「それは……楽しそうですね」
「でしょ」
 お互いの気持ちいいこと以外に知って、知られていくというのは、こうも嬉しく期待を持つものなのだと……『恋人』という言葉をわざわ認めさせるだけで感じられるようにカカシがしてくれたのだと、イルカは恋人から初めてもらったものを噛み締めて、まずはただ抱きしめるだけの幸せを味わうことにした。カカシもきっと、同じように感じてくれるだろう。
  • やづみ
エロい…と思いながら読んでたらかわいかった!!!
同軸リバかつ同セックスリバという個人的に最も難易度の高そうだと思っていたプレイをあさっさり書かれるの、さすがです。
  • レピドプテラ
ご投稿ありがとうございます!
はぁ、良かったです……。エッチだし可愛いし、ハッピーエンド。お互い初めてって、やだもう、すきです。ありがとうございました!
素敵な企画をありがとうございます。
全然書き終わっていませんが、参加させて頂きます。
└追記しました。

お題「花見しながら温泉えっち」


年度末の繁忙期でへとへとになりながらイルカが自宅アパートに帰宅したのは日付が変わる2時間前だった。
やっと…やっと……明日明後日休みだ。
長かった…本当に、今週は長かった…。

先に帰宅していたカカシは「おかーえり」とイルカを出迎え、お風呂沸いてるよと声を掛けてくれた。
熱い湯船に浸かり「はぁ〜〜〜〜」と深い溜息と共に身体に溜まった疲れを吐き出す。
疲れた……
腹減った……
事務仕事は身体じゃなくて頭が疲れる…

先日混雑している受付にイライラした上忍に舌打ちされ、「事務は椅子に座って仕事出来るんだから良いよな。こっちは疲れてるんだ早くしてくれよ」と嫌味を言われた。
相手が任務後で疲れているのも分かってる。待たせてしまって申し訳ないとも思ってる。
でも焦って確認漏れしたら、それこそ後処理で迷惑を掛けてしまう。
「お待たせして申し訳ございません」と受付で鍛えられた対人能力と真摯な対応に、その上忍は怒りを納めてくれたが……繁忙期で疲れてへとへとの時と重なると少し堪えた……。
イルカは今日の疲れを風呂場で洗い流し、カカシのいる居間へと戻った。

◇◇◇

「ねぇせんせ、明日温泉行かない?」

居間の卓袱台で先に食事を済ませたカカシと向かい合い、疲れ過ぎて食欲が無いけれど食べないと身体が持たないので無理やりもぐもぐと口を動かしていたイルカは、思わぬ提案にピタリと箸が止まった。
(え、何その素敵な提案。行きたい!)
ばっ!と顔を上げたイルカを見てカカシがくつくつと笑いを堪えている。

「ん、せんせずっと頑張ってたもんね。ご褒美だーよ。」
「カカシさん……ッ!そんな事言われたら惚れちゃいます…」
ぶはっと笑いながら「もう惚れてるでしょ?」と言われ、イルカは素直にはいと返事をした。

◇◇◇

カカシが予約してくれていた温泉宿は、忍の足で1時間位の距離だった。
「あんまり遠いと疲れてるのにしんどいでしょ?」
どこまでも優しいカカシに感動し、宿にチェックインすると、そこは部屋に専用露天風呂が付いた贅沢な部屋で思わずわぁ!と声が漏れてしまった。

「凄い!カカシさん見て見て!専用露天風呂がありますよ!」
「ん、見えてるよー」
カカシはにこにこしながらイルカの反応を楽しんでいる。
「しかも露天風呂の周りに桜の木がある!」
露天風呂の周りは目隠しするように木の板壁で囲われていて、細い桜の木が数本植えられていた。
ちょうど見頃を迎えた桜は露天風呂の上に花びらをひらりひらりと散らし、春先の淡い青空と相まってそれはそれは綺麗だった。


「桜を見ながら温泉入るの初めてです」
嬉しそうに頬を染めるイルカと並んで露天風呂に浸かっていたが、普段長湯しないカカシは白い肌を淡い朱色に染めていた。
先に出ようかなと、隣をチラリと伺うと、イルカはその視線に気づき、カカシの肩に手を伸ばした。
「肩に桜の花びら付いてますよ」
イルカは指先で花びらをつまみ取ると、ふふふっと溢れる様に笑い、カカシさんも温泉で桜色だと言った。
温泉に連れてきてよかったと思いながら微笑み返すとイルカの顔が先程よりも濃い朱色に染まった。


湯船からざばりと立ち上がり、露天風呂の縁に腰掛け上半身を冷ます。
ちょうどカカシの股間が、湯船に浸かっているイルカの目線の高さと同じになるが、イルカは先程からもじもじとしながら湯に浮かぶ桜の花びらを見つめている。
一房だけこぼれ落ちている髪をすくい、耳に掛けてやりながら、
「温泉で勃っちゃったの?」
と訊ねると、一瞬パッとこちらを向いて何で分かったのかという顔をした後、恥ずかしそうに顎まで湯に浸かりコクンと頷いた。
あぁ…本当に可愛い人。

イルカの二の腕に手を伸ばし、湯船の中で一緒に立つように促すと緩く芯が通ったイルカの股間が湯から現れる。
上半身を寄り添わせてイルカの陰茎をゆるゆると扱くと、ぴくん…ッ!と反応が返ってくる。
そのままゆるゆると扱き続けると、緩く芯が通っていた状態からイルカの腹に付きそうなほど育ち切っていた。
イルカの陰茎に指を掛け、下に向けたところでパッと指を離すと腹に当たった陰茎がバシッと音を立てる。
「遊ばないで下さい」
「ごめーんね、だってせんせの可愛いんだもん」
遊ばないでくれと口では言いつつも、されるがままになっているイルカに口付ける。
「ねぇせんせ、疲れてるでしょ?今日は無理させたくないんだよね」
そう言いながらカカシはイルカの陰茎を太腿で挟み込むとピタリと固く閉じた。
「カ…カシさん?」
「受け入れる方が体力的にしんどいでしょ?だから今日はオレが……」
耳元で囁くと、カカシの意図が伝わったのか、イルカの目が丸くなる。
「えっ…!でも…俺っ…あの…」
カカシの太腿の間で陰茎がピクンぴくん…ッと反応しているのに本当にして良いのか戸惑っているイルカの乳首を指先で撫でて摘み、舌をほんのり見せながら後押ししてやる。
「イルカせんせが俺の中で気持ち良くなれる様に…腰振ってる間乳首舐めてあげるよ……」
イルカの喉がゴクリと鳴った。


初めは戸惑っていたイルカだったが、カカシの太腿に挟まれたまま腰をカカシの後孔へこすりつける様に動かしていると、温泉で温まった身体が別の熱を持ち始める。
カカシはイルカの乳首を片手で弄りつつ、もう片方の手でイルカの指を後孔へ導き、温泉の柔らかなお湯でちゅぷり…ちゅぷり…ッと解させた。

「ンっ…そこ……」
イルカはいつも自分がカカシに触られて気持ち良い所に指を動かしながら素股を続ける。
指を2本から3本増やし、カカシの中を撫で広げる様に動かす。
「ハァ……せんせ、じょうずっ」
「カカシさんがいつもしてくれてるやり方ですよ」
グッ…と孔の中で指を腹側に押すとカカシの身体がぶるりと震えた。
「ちょっ…、不意打ちはやめて」
「いつもされてる俺の気持ちが分かりましたか?」
「うん……イキそうなくらい気持ち良いね」
そう言ってカカシは後孔からイルカの指を抜き取り、自分だけ露天風呂の縁に腰掛けた。
イルカに解させた後孔がひくつくのを見せ付けるように足を開き、イルカを誘う。
「ふふふっ……せんせそんなに見ないで」
「自分で足開いたくせに…ッ!」
「見てるだけで良いの?」
真っ赤な顔で、ぐっと眉間にシワを寄せたイルカは
「良い訳がない…カカシさんっ気持ち良くさせて」
とカカシにしがみつきながら、我慢しきれず蜜を零す陰茎をうずめた。
初めてのカカシの中は驚くほど気持ち良くて、熱くて、狭くて、挿入する前に約束してくれた腰振ってる間乳首舐めてあげるという言葉通りに舐められ、あっけなく達してしまいそうになる。
腰を振るたびに湯が揺れて、
桜の花びらのひらりひらりと舞い降りて、
カカシの肌が桜色に淡く染まっている。

「……んッ、イルカ、イルカ…気持ち良い?」
「ぅん、気持ち…良い……ッ!カカシ…さんは?」
「きもち、いいよ…ッ!イルカ、ねぇっ、ここ握って…!」
イルカの手にカカシの陰茎の根元を握らせると、後孔の中がきゅうっと締まった。

「やっぱり我慢出来ない……イルカがオレの中に出したあと、オレもイルカの中で出したい」
そう言ってジュ…っと強く胸を吸うと、桜の花びらの様な跡が付いた。

イルカは、今与えられているカカシの後孔の気持ち良さの後に、いつもの気持ち良さも与えてもらえるのかと…駆け上がる快楽に身を任せ、精を吐き出した。

【終わり】
  • やづみ
おちんで遊ぶカカシがかわいかったです(*´ω`*)
前半のほのぼの雰囲気で二人の仲よさを見せつけてからのさらにラブラブなえっち(カカシのセリフもエロい!)…ごちそうさまでした!
  • ジュゴン
やづみ様
感想コメントありがとうございます!(◍•ᴗ•◍)
生まれて初めて感想頂きました。
これ自分以外の人が読んで意味分かるのかなぁと思いながらひとりでせっせと書いていたので、読んでくれた上に感想まで頂けるなんて…感謝しかないです。
やづみ様が素敵なkkirに巡り会えますように。
  • 高井田 律子
年上で甘やかし上手なダリハニのカカシさんがスゴいです。
(語彙力の壁)

甘やかされ慣れてる先生も可愛くて可愛くて、このお題を選んで良かったハッピーうぇーーーーい!!!!と一人浮かれています。

温泉お花見えっちは素晴らしいですよね!
ありがとうございました
  • ジュゴン
高井田 律子様
感想ありがとうございます!(◍•ᴗ•◍)✿
まさか感想頂けるなんて……
ドキドキしながら送信ボタン押して良かった……!( ;∀;)
同じお題でも書き手が変われば印象も変わって何度だって美味しいkkir。
企画して頂きありがとうございます。
  • 高井田 律子
年下の先生が可愛くて可愛くて仕方ないなぁってカカシさんの気持ちが伝わってきました

良いもの見させていただけて、めっちゃハッピーです!
  • レピドプテラ
ご投稿ありがとうございます!
らぶくてエロくて最高でした……。先生、最後に抱かれたがってるの、欲望に素直でホント可愛い、最高です!ありがとうございました!
セフレの別れ話で媚薬

リバ企画ありがとうございます
2時間あると思って欲張ったらちょっと時間オーバーしてしまって企画の趣旨からずれてしまいましたがご容赦ください
  • やづみ
つづき…??つづきがないんですが……????めちゃくちゃえっちうおおお!!!ってなったあとの気持ちをどこへもっていけば…
  • 高井田 律子
えっちですね!
とてもえっちですね!

まさかの奔田さんのご参加に「多分読みた過ぎた私の夢だと思う」って、今朝起きるまでわりと夢だと思ってました。

先生相手に自分から乗っちゃうカカシさん最高でした。
欲張りなので続きが読みたいです。
  • レピドプテラ
ご投稿ありがとうございます!
えっちいいいいいぃきぃぉかじょkじゃおkじぇ@ろいあうs
まさかカカシさんが乗っちゃうなんて、この続きいいぃぐぬぬぬな感じもまた余韻があってたまらないです。参加していただけるなんて夢みたい。ありがとうございました!
『校長40暗カカ20』


うみのイルカ、四十歳。
アカデミーの校長で中忍。
身長は俺よりやや低いくらいだけど、無造作に括った黒髪の分も入れたら同じくらい。
かさついた肌に刻まれた皺は、笑うともっと深くなる。
濃紺の詰襟の寸胴鍋みたいな制服に隠された体は、意外にもちゃんと鍛えられていた。昨日風呂上がりに横目で見たから知ってる。

――この体を、俺はこれから隅々まで知ることになってるらしい。
少なくとも、四十四歳の俺は。



任務帰りに抜け忍集団から追われ、里に程近い還らずの森で半分以下にまで相手の数を減らしたはいいけど、チャクラが底を尽きかけていた。
森の奥深くまで入り込み、隠れてやり過ごそうとしたらぼんやりと光る木の洞があった。普段ならそんな目立つ所なんて絶対隠れないのに、あの時の俺はなぜか引き寄せられるようにふらふらとその中に潜り込み、結界を張って膝を抱えた。
そして目が覚めたら、馴染みの病室でこの『イルカ先生』が俺の手を握っていた。
「驚くだろうけど、ここは君のいた世界の二十四年後だよ」
そう、困ったように笑いながら。

どうやら俺は、何らかの術で未来に飛ばされたらしい。
諸々の条件があって、それが揃って元の世界に帰れるのは次の新月の夜で、俺はこの時代でなんと六代目火影になっているんだという。
でもイルカ先生という人が教えてくれた全てより何より驚いたのは、このイルカ先生とこの時代の俺が付き合ってるってことだった。



そういうことだから、とイルカ先生に連れられて『帰った』のは郊外の平屋で、そこで『俺たち』は一緒に暮らしてるんだと言う。
事実を教えるのに照れ臭そうにしたイルカ先生の、はにかみ過ぎて歪んだ口元に一目惚れした。
いや、二目惚れだ。
最初に病室で目覚めた時、握ってくれてた手の温かさと、ベッドに突っ伏して顔だけこちらに向けてた、あの無防備な寝顔で本当はきっと既に落っこちてた。
ならば俺の目的は一つだ。
元の時代に戻れることは確定してるし、そうしたらイルカ先生と俺はもう会えない。二度と。
この時代の俺は五影の集まりで当分帰ってこないって言うし、つまり邪魔者はいない絶好のチャンスだ。
イルカ先生を口説き落とす。


なのに、イルカ先生は本当につれない。
どうせ『俺たち』は散々ヤってるんだろうし、『俺』なら間違いなくそうしてるはずだから、俺とセックスしてくれてもいいはずなのに。

「カカシはカカシさんじゃないだろ」

この一言でスパッと切り捨てられてしまう。
俺を見る眼差しには明らかに通常以上の情愛を感じるのに、それは俺がカカシだからで。でも抱かせてくれないのは、俺が『カカシさん』じゃないからだ。
イルカ先生が『俺』に操を立ててくれるような人なのはすごく嬉しいけど、二十四年後のおっさんの『俺』のことなんて知るもんか。
でもイルカ先生は本当に頑固で、どんなに口説いても、二度と会えないことを強調して憐れみを誘っても、絶対に隙を見せない。

「俺が何年カカシさんと付き合ってると思ってるんだ」

なんて得意げに笑いながらするっとかわされると、こういうところで二人の歴史ってやつが立ちはだかる。
そうやってお誘い鬼ごっこを繰り返してるうちに、とうとう新月の夜が来てしまった。



還らずの森には、当時と同じ時刻と思われる丑の刻には到着してなければならない。
卓袱台でしんみりと向かい合って夕食を食べた後、イルカ先生が風呂を勧めてくれた。
俺は本当に最後のチャンスだと、念入りに体を綺麗にして風呂から上がる。
腰にタオル一枚の姿で寝室に入ると、俺がここに来た時に着てた服を箪笥から出して揃えている先生の背後に立った。

「またちゃんと髪を拭かないで来たな? まったく、子供みたいだな」

くるりと振り返ったイルカ先生の顔から笑みが消えた。
俺の表情に、何かがこれから起きることを悟ったんだろう。

「最後だからって、できないもんはできないぞ」
「分かってるよ」

俺は腰のタオルを剥ぎ取った。

「イルカ先生を貰えないなら、俺を貰ってよ」

イルカ先生は俺が何を言ってるのか理解が及ばないらしく、小首を傾けて真っ直ぐに俺を見た。

「俺がイルカ先生を貰えないのはもう分かったから。それなら俺を抱いて。俺の初めてを先生にあげるから、俺の中にイルカ先生をちょうだい」

何か言おうとした口をキスで塞ぐ。
やっとキスができた。かさついてるけど柔らかくて、『俺』はきっとこの唇が大好きだと確信する。
隙ありって言ってやりたかったけど、柄にもなく緊張して唇が震えてうまく喋れない。

「……それは、俺がカカシを抱くってことか?」

少し顔を離した先生が小さく囁く。

「そうだよ。この時代の『俺』はきっと、イルカ先生に何でも与えてるでしょ? 愛も信頼も、何もかも。俺だってそうしたいけど時間が足りない。それなら『俺』が与えてない唯一のものを俺があげたいの。イルカ先生が好きだから」

短絡的な考えだけど、もうこれしか浮かばなかった。
『俺』があげてなくて、俺がイルカ先生に捧げられる愛の形。
自分のことだから分かる。
『俺』はイルカ先生に自分の体を明け渡してはいないはずだ。俺だってこういう状況にでもならなきゃ、思い付きもしなかっただろう。
だからこそ、拒絶されたらどうしよう。これで最後なのに。俺を抱くなんてイルカ先生だって考えもしなかったはずだ。腹の中身が落ちるような思いを堪え、何とか踏ん張って立つ。

「ありがとう。カカシの気持ち、受け取るよ」
「…………気持ちだけ?」

ふうっと倒れそうになるところを、イルカ先生ががっしりと抱き寄せてくれた。

「気持ちも。体もだ」





イルカ先生の肉厚な掌が俺の肌の上を撫でていく。
宥めるように。煽るように。

「キスはもう駄目だ」

そう一言釘を刺されたけど、首筋から胸に辿る舌と唇を感じられるから文句は言わない。
イルカ先生は俺をベッドに押し倒すと、自分も服を全部脱いでくれた。
俺の肌に触れる腕の内側や太股の素肌の感触がたまらない。
俺の勃ち上がったぺニスを含む口腔の温かさに、これも一つのキスだと嬉しくなる。
先生の指が会陰を緩く撫で、その奥の搾みに恐る恐る触れると、ちゅぽんと音を立ててぺニスから口が離れた。

「初めて、なんだよな?」

指先がゆるゆると、これからイルカ先生を受け入れる場所を撫で続けている。
本当にいいのかと問いかけるみたいに。

「そうだよ。処女はめんどくさいからイヤ? ちゃんと風呂で準備してきたよ」
「違う。そうじゃなくて……って、準備もしてくれたのか」
「俺じゃ勃たない?」

するとイルカ先生は体を起こして俺の手を掴むと、自分の股間に引き寄せた。

「勃ってるね……良かった」

ほっとしてつい頬が緩むと、イルカ先生は顔を少しだけ歪めた。
一瞬、泣くかと思った。

「俺がカカシ相手に勃たないなんてことがある訳ないだろ。どんなカカシだって、好きにならずにはいられないんだ」

こんな情熱的な愛の告白があるだろうか。
俺はもうすぐ元の時代に戻るし、本当はこの時代と繋がってるかも分からない。
それでも。
この言葉は、今のイルカ先生の気持ちは俺だけのものだ。

「ねぇ、俺を貰って。ちゃんと、全部」

イルカ先生の熱の塊が肌に触れ、ぬるりと入ってくる。
予想以上の質量と圧迫感に呻きを上げると、頬に、額に唇が当てられた。何度も、何度も。
それからゆっくりと揺さぶられ、カカシと名を呼ばれる度にイルカ先生と返した。
俺の内側全部にイルカ先生がみっしりと埋まってる気がして、この感覚を何十年経っても忘れたくないと、ただそれだけを願っていた。




不意に地軸がずれたような眩暈を覚えて、駆けていた足が止まる。

「六代目、どうなされました」

急な事態に、慌てて駆け寄ってきた護衛の暗部を片手で制した。

「ごめん、もう少しこのまま待機で」

目を閉じたまま、甦ってきた新たな記憶が体に馴染むのを待つ。
イルカの――イルカ先生の体を受け入れた記憶を。
あの時いろいろ考えていた自分の若さと性急さと『俺』への対抗心に苦笑し、そして。
切実な想いを、ほんの少しだけ羨ましく思った。

「お待たせ、帰ろうか」

年若い護衛はどこか具合でも? と尋ねることもなく、
  • 如月ゆう本゜
小さく頷くと先を駆け出す。
そう、帰らなきゃね。
イルカの元に。
それで何て聞いてやろうか。
「二十歳の俺はどうだった?」か。それとも「浮気者」と詰ってやろうか。
……いや、やっぱりこうかな。

「『俺』を愛してくれてありがとう」

あの時よりも衰えた、でも遥かに馴染んだ腕で抱きしめながら。



【完】
  • 高井田 律子
読みたかった暗部くん案件が拝めて私は幸せです。
あざまーーーっす!
  • 如月ゆう本゜
暗部君と校長先生はいついかなる時も良いものですね…!
コメントありがとうございました!
  • レピドプテラ
いつだって、タイムリープは尊い!!!尊い!!!尊い!!!
暗部くん可愛かったです(涎
  • 如月ゆう本゜
欲張ってタイムリープまで盛ったので更に疾走感増してます!いいですよねタイムリープ…
読んでくれてありがとうございます~!
セフレの別れ話で媚薬

「もう潮時かなって思うんですよ」
久々に二人きり。
至って普通の里のど真ん中にあるありふれた観光旅館。
最初の頃は、あえて里の外やらプライベートを金で買えるようなキチンとした場所を選んでいたが、最近はもう時は金なり、時間短縮こそ最善にして最良と言わんばかりに、とにかく近場で適当に済ます。
ここは忍の里だ。
いちいち細かいことなど気にしていられないというか、隠すのが面倒になったし、そこまで世間は俺とカカシさんに構っていない。
いや、そうでもないか。
次期里長となるはたけカカシについては多少の身綺麗な状態を期待するが、個人としてのはたけカカシには口を出してこない。
それだってもう残り時間も少ない。
お互いわかりきっているけど、そこそこ見ない聞かないわからないフリをしている。
けどもうやっぱり限界かな?と思わなくもないのは、俺に教頭職の話が出た地点で色々と察した。
教頭といえば、実質アカデミーを切り盛りするトップということだ。
忍術アカデミーのトップたる里長を補佐する立場である事を求められて、俺自身の身の回りも綺麗に地均しが進められている。
カカシさんにだって耳が痛い話だとか、見えないフリではどうにもならない事なんかは色々言われているだろう。
俺の切り出した話に興味がないとでもいうかの如く、まるで自宅の風呂にでも入るみたいにばっさばっさと脱がれてゆく衣類。
特に何か労りの言葉をかけたり、確かめあうような愛もないわけで、セックスするしかないとは言えど、余りにも…、あ、パンツは待とう。
パンツは待とう!
それくらい脱がせる楽しみは残しておいて欲しい。
半分くらい尻まで出たカカシさんの右腕を掴む。
「俺の話聞いてますか?」
「脱ぎながら聞いてますよ」
手袋以外はパンツしか纏っていないカカシさんが極めて怪訝そうに見つめ返してくる。
「時間ないんでしょ」
確かに明日の朝も夜明けから細かな予定は入っている。
いつも無い時間のギリギリを縫って、セックスの後は崩れるみたいに爆睡して仕事に出る。
だから俺達は自宅に帰るよりもアカデミーの近場で宿を取る。
そもそも俺達がセックスをした切っ掛けは、酒だ。
飲み過ぎて家まで帰るのが面倒臭くなって、ホテルで飲み足してるうちに何となく触れあって始まってしまったという、子供たちにはとてもじゃないが聞かせられない失態からだ。
なんとなく、そのままズルズル続いている。
そのズルズルを正すためににも、ここは1つ真面目に話し合うべきだと思うのに、この人はそのつもりがないのか結局手袋以外は脱ぎ捨てている。
実際にもう時間はない。
「最後なんだし、楽しんできましょうよ」
俺からは言い出せなかった最後。
やっぱりセックスするだけの不毛な関係なんて、終わりがあっても仕方がない。


いっぱい楽しみたいし、先生を覚えておきたい。
そんな蠱惑的な言葉を囁かれて、ついつい俺は頷いてしまう。
カカシさんがポーチの中から取り出した小瓶には、何やら暗部専用の媚薬だとかいう物らしい。
俺は今までに1度だってカカシさんに薬の類いを使った事がない。
何故ならどんな薬であろうと、薬と名がつく限りは必ず副作用が潜んでいるからだ。
一時的な快楽の為に、カカシさんをほんの少しだって『いつも通り』から外したくなどなかったからだ。
数日先まで休みだと言われても、急な指名でセックス中に出ていった事も片手で足りないくらいある。
こんな最後という切っ掛けでもなければ、いくらカカシさんの希望でも媚薬なんかを使うことはなかったろうし、そもそも選択肢にも入ってすら居なかった。
俺がやれる事で叶えられるならと、あえて副作用なんかも聞かずに渡されたトロリとした液を指へと絡めてカカシさんのナカへと塗り込む。
組み敷いたカカシさんの耳元へと唇を寄せて、「痛いですか?」「辛くないですか?」と聞けば「気持ちいいから」「大丈夫」と、常より少しばかり笑い混じりの柔らかな声が耳元へと返される。
聞きたいことも言いたいこともそうじゃないけど、言い出せるほどの何かが足りない。
求められるままにカカシさんの内側へと猛った己を収めれば、もうそれだけでイッてしまいそうになる。
きっかけはどうであれ、俺にとっては憧れで、何年間も肌を重ねた唯一無二の人だ。
この人には内緒にしているけど、実は前も後ろもこの人がはじめてだ。
カカシさんにはバレているかも知れないけど、聞いてこないから言っていない。
きめが細かくしっとりと手に馴染む肌は、俺以外とも繋がりを持っているかも知れないが、聞いてしまえる勇気がない。
もしもこの人に何かしらの感染症を移したらと考えると、とてもじゃないけど俺からは他人には触れられなくなった。
カカシさんを巡る華々しい噂話は毎日の様に耳には入ってきていたし、噂半分にしたって男も女も選び放題には違いない。
俺とカカシさんは飯を食って、たまにセックスする。
忙しい時なんかは俺から断る事もあるし、カカシさんから断られる事もある。
もう片手で足りない年数ほど関係は続いているものの、1度だって互いの気持ちを確認する言葉は無かった。
聞かれなかったから言わない。
ただセックスを繰り返して、別れ続ける。
次の約束すらした事がない。
そういう言えない事が重なりすぎて、正直疲れた。
心の奥ではカカシさんとどうにか違う形になりたいと思いながらも、自分からは何一つとして動いてこなかった。
にも関わらず俺が一方的に心の奥へと澱みたいな物を静かに積もらせ、それが不平不満という形で長い時間をかけて確実に腐敗していった。
俺だけが惚れていて、何もかもこの人を優先させる事が当たり前になっている。
そんな馬鹿な被害妄想が拭っても拭っても心の奥から染み出してくる。
だから良い機会なんだと思う。
立場の違いだなんて、格好の言い訳じゃないか。
みっともなく月に向かって吠える前に、俺からキチンと身を引いただとかの少しばかり思い出を補正出来る要素が欲しい。
覚えておきたい。
そんな言葉の通りか媚薬の効果か、カカシさんの内側がいつも以上にねっとりと熱く俺の形を舐めるみたいに添ってくる。
思わずびくついて跳ねた腰を、カカシさんの太腿がねだるみたいに撫でてくる。
抜けかけた俺のチンコがカカシさんのナカへとすぐさま飲まれ、柔く吸われて、包まれる。
ほんの数㎝にも満たない前後のうねりに、あっという間に果ててしまいそうになって唇を強く噛み締める。
許すみたいに大きな手のひらで囲われる後頭部と、すがるみたいに抱かれる背中にどうしたって息が詰まる。
出してしまえば攻守交代。
こんな所でまだイキたくない。
俺があんたを抱いたってことを、出来ることなら長く覚えていて欲しい。
珍しいと散々からかわれた陰毛。
初めての夜に暗部の人間はみな剃ってしまうから、そこに毛が当たるのはくすぐったいと笑われた。
暗に示される過去の恋人達。
俺には全く届かない、属する事すら叶わない隔たりがあることは、同じ忍だから余計にわかる。
近くて遠い大きな違いだ。
形ばかり真似して剃ったら、生えかけがチクチクすると抱くときも抱かれるときも笑われ続けて、俺がキレてベッドの中から蹴り出した。
今は笑いもしないし、なんだったら俺の陰毛に散った精液まで肌に刷り込むみたいに舐めるんだから、まぁそこそこは慣れたって事だと思う。
でも俺は当時も今も、触れられればドキドキするし、自分から手を伸ばすときは震えていないか意識する。
快楽だけを追う閉じられた両目の縁がセックス中に赤く染まっていく様は何度みたって惚れ惚れするし、上がった口角の横についた黒子には逆にどうしてだか目を逸らしてしまう。
艶やかな低音の吐息で隠すことなくつまびらかに晒されてゆく弱点と悦び。
喉が唾液を飲み込み滑らかに動くだけで感動する。
潤滑油として使った媚薬のせいか、何時もよりもずっと早くから身体が火照る。
薬物耐性が高いカカシさんにも効いているのか、俺の腕の中に閉じ込めた身体も隅々まで朱を帯びて汗ばんでいる。
僅かに身動いで背中へと回されていた手がスルリと落ちて、離れてゆくかと思った指がそのまま俺の頬を撫でる。
「せんせ、見すぎ」
うっすらと開けられた目が余りにも優しすぎて。
セックスくらいでしか繋がりなんて無い筈なのに、受け入れられていることが苦しくなる。
泣きそうになってぐずつく鼻をカカシさんの髪に埋めて息を吸う。
みっともなくとも愛を乞えたらどれ程良いか。
でもそれは俺の役目じゃない。
この人が誰とどんな夜を過ごすかなんて、知りたくもないから聞いていない。
恋人の様に甘えて甘やかされる性行の後も、出してしまえば翌日はあっさり各自の家に帰るのがいつもの事だ。
俺以外にもそういう相手が居るかも知れないし、その相手にはもっと特別な事をしているかも知れない。
こんな技巧も何もない、ただ繰り返しがむしゃらに突くだけの動きよりも、カカシさんが俺を抱くときみたいに上手く誘導出来ればいいのに。
今だって本来ならば俺の方が有利なはずなのに、イニシアチブは何時だって絶対的にカカシさんが握っている。
里に定住するようになって太ったと嘆いていた腹は、確かに厚みはあるものの上質で軟かな筋肉で見事に腹筋は割れている。
俺が突き入れればナカへと入れた俺の形で膨らみ、腰を引けばその分凹む。
当たり前と言えば当たり前なのに、どうしてだか何度みてもおかしな気持ちで仕方がない。
入れる、膨らむ、引く、凹む。
カカシさんの出来るだけ奥をチンコの先で擦ってやりたくて、グッと腹へと力を込めながらヘコヘコと腰を揺らす。
何度繰り返したか覚えてもいない単純作業。
ぱちゅぱちゅと肌がぶつかって立てる音と、カカシさんの濡れたチンコの先っちょが俺の腹に当たって擽ったい。
そうこうしている内に段々と考えがまとまらなくなって、バカみたいに閉じ忘れた口の端から涎が垂れる。
慌てて飲み込もうとしても間に合わず、カカシさんの鎖骨の内側へと落ちて、唾液ごと肌を吸って舐めて清める。
俺が突く度にカカシさんのチンコだって俺の腹へと当たるものだから、いつもは内側から突かれている場所が皮膚側からトントンされて、抱いているのか抱かれているのかぐちゃぐちゃになってヒイヒイと情けなく声が上がる。
そこへだめ押しみたいにイルカだなんてカカシさんが熱っぽく俺を呼ぶものだから、もうだめだ。
避妊具を着けていないと気が付いたのは、カカシさんの中に精液をぶちまけてからの後だった。


素肌に旅館の浴衣を羽織り、広縁の窓を少しばかり開けて外の空気を吸い込む。
春の夜は夜明け前にも関わらず生温く、眠っている筈の植物の息吹きが鼻につく。
備え付けのテーブルと二脚の向かい合った椅子しかない狭い空間。
カーテンをめくれば里を一望する事も出来るが、あえて見ようとは思えない。
当たり前に置かれた灰皿を前に、久し振りに煙草の存在を思い出す。
居心地が悪く座り心地の良い上等な椅子に、やっちまったと頭を抱える。
中央部分が磨り硝子の嵌め込み障子を一枚隔てた部屋の中には俺と同じく浴衣一枚のカカシさん。
今は俺も辛うじて起きてはいるけど、これは寝たら起き上がれなくなるパターンだなと、胸の内でこっそりと溜め息をつく。
抱いて抱かれた身体は重く、頭の芯は熱っぽく痺れている。
別れの言葉をどうにか絞り出そうとするものの、いやいやそもそも別れるの前に付き合ってもいないと駄目すぎる関係に目を反らしたくなる。
とても良くないとはわかっているのに、寝返りを打つカカシさんの声の艶かしさやら何やらに心がざわめく。
ザラリと爪先が畳を掻く音に、せめて布団の中で寝てもらおうと障子を開ければもう駄目だ。
今しがたまで交わっていた精液の生臭さに、多少の換気では抜けきらない濃密な空気。
薄暗い部屋の中でも、皮膚の下側から照らすみたいに浮かび上がる肌の白さ。
終わった事だと心の中で唱えるのに、また内側から溶けてくる。
ぼんやりと眺めている間にまた囚われて、引きずり込まれて、飲み込まれる。
気が付いたときには旅館の布団の上へと倒れていて、夜明けを告げる鳥の声が目時ましの代わりとなった。
悪夢というか、淫夢というか、白昼夢さながらの朧気な数時間。
その場かぎりの別れようなどという口約束は過去に何度も反故にされた。
ただ分かっていることは、また誘われれば断れないだろう自分の意思の弱さだけ。
こうして愛はいつも過剰で不足し、俺だけが不満を募らせる。
  • レピドプテラ
いつだってちょっとしたフェチが入ってんのホント凄いですね。手袋パンツからの手袋全裸を想像して思わず滾ってしまいました///
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