お題は『花見しながら温泉えっち』で書かせて頂きました。
素敵な企画をありがとうございます!
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桜の下にて
「うわぁ…本当に山が桜色に霞んで見えますね!綺麗だなぁ…」
到着したばかりの宿の、部屋の窓から見える景色に、イルカは頬を紅潮させている。
「流石、諸国を旅してきた綱手様一押しの宿だね。気に入った?」
カカシが問うと、イルカは「はい!」と頷いて、「綱手様へのお土産は、何か良いお酒にしましょうね」と微笑んだ。
世界の命運をかけた忍界大戦が終わってから一年。カカシは書類の書き方から他国との交渉術、口うるさいご意見番の機嫌の取り方や、調子のいい国主達との付き合い方etc、etc…火影としてのノウハウを、綱手に叩き込まれていた。そうしてある日、綱手が「さて、これがお前に教える最終事項になるが…」と前置きして言った。
「火影になったら、のんびり休める日はなくなると思っておきな。これから忍びの世界は大きく変わる。いや、変えていかねばならん。それこそ寝る暇もなくなるだろう。だからその前に、お前に三日休みをやろう。お前、今までも忙しくて、イルカとゆっくり過ごしたことがないだろう?イルカにも休みをやるから、二人で骨休めしてくると良い。そうだ、湯の国なんかいいぞ。あそこは今桜が見頃だしな」
イルカとの関係は、当時の厳しい状況を考えて、大っぴらにはしていなかったのだが、そこは流石火影というべきなのだろう。すっかり見抜かれていたことに、少々気恥ずかしさを感じながら、それでも自分たちのことを思いやってくれる彼女に感謝し、カカシは有難く、忍びになって初めての三日間の休みを取った。そうして、二人は今、湯の国にいる。
湯の国は、今桜が満開だ。国を囲む山々も、街並みも、桜色に彩られている。
二人が泊まる宿は、あまり有名ではないが、知る人ぞ知る良宿なのだそうだ。貸し切りの露天風呂が売りで、和風の庭の中に温泉が引いてあり、少し熱めの湯で体を温めながら、四季折々の花を楽しむことが出来る。
今は丁度桜の季節で、二人の部屋からも、柵の向こうの枝垂桜が見える。
「カカシさん、早く入りましょう!」
「えぇ?まだ昼間ですよ?」
「昼の桜も夜桜も楽しみたいじゃないですか」
流石風呂好きで通っているだけのことはある。最低二回入るのは決定かと、カカシは小さくクスリと笑った。
互いの体などすっかり見慣れているはずなのに、なぜかイルカが顔を赤くして俯いている。
「せんせ、どしたの?」
カカシが近付くと、イルカは「あ、いや、その…」と、ますます顔を下に向けて、とうとう、白い湯と顔が平行になる。
「下ばっかり見てたら、せっかくの桜が見えないよ?」
イルカの顔を覗き込むようにしてカカシが囁くと、イルカがぽそりと言った。
「いえ…カカシさんが、綺麗で…」
「…けっこう傷だらけだけどねぇ」
実際、カカシの体には小さな傷痕がたくさんついている。オビトと戦った時に付いた大きな十字の傷も、くっきりとカカシの胸に残っている。
けれど、イルカは首を横に振った。
「カカシさんは、綺麗です」
少なくとも、イルカは本気でそう思う。色白なカカシの肌が、今は湯で温もって桜色になっていて、色香さえ感じる。
カカシは少し首を傾げて、それから青灰の目を微かに細めた。
「せんせ、オレのこと、抱きたいって顔してる」
イルカは驚いて顔を上げる。カカシは微笑んでいる。イルカを揶揄っているわけではないようだ。
カカシは言った。
「いいよ。イルカ先生になら抱かれても。今まではオレが戦闘に出ることが多かったから、あなたが抱かれてくれてたけど、オレ、あなたに抱かれるの、嫌じゃないよ」
先生なら優しくしてくれそうだし、というと、イルカは小さく眉を寄せた。
「それ、誰かと比べてます?」
カカシはきょとんとして、それからクスクス笑った。
「心配しないで。オレ、処女だよ。まあこんな見てくれだからね。若い頃は変なのが寄ってきたこともあったけど、返り討ちにして使い物にならなくしてやったら、誰も寄って来なくなった。だからね、先生が初めて」
何を、とは聞かなくても分かった。相当痛い目に遭ったのだろうその『変なの』に、イルカは少しだけ同情して、けれど同時に喜びを感じた。
「…いいんですか?」
「いいよ。…来て、せんせ」
誘うように両腕を広げたカカシを、イルカは、はじめは恐る恐る、けれどやがてしっかりと抱きしめる。
イルカの唇が、カカシの白い首筋を這い、胸元を吸う。チュ、と音を立てて唇が離れると、仄かに朱い跡がそこに残った。
イルカは、カカシの唇に口付けし、手でカカシの胸をそっと撫でる。微かな尖りを指先でなぜると、カカシの体が僅かに跳ねる。歯の隙間から舌を挿し入れ、柔らかな口腔を探ると、吐息の合間に甘く掠れた声が零れた。
カカシはそのままイルカに跨って、二人の芯をピタリとくっつける。イルカのそこは、既に熱をいっぱいに孕んで、硬く勃ちあがっている。
「せんせ…興奮してる」
「そりゃ…好きな人を抱けるんですから…興奮するに決まってるじゃないですか」
言わせんで下さいよ、と困ったような顔をするイルカに、カカシはクス、と小さく笑った。
「嬉しい。…ね、早く先生のコレ、頂戴」
「慌てちゃダメですよ。ちゃんと解さないと」
「優しいね」
「あなたも、いつも俺に優しくしてくれるでしょう?俺だって…優しくしたいです」
そう言って、イルカは指先でカカシの尻の間を探り、カカシの蕾に触れる。そうして指先を、ノックするようにそっと押し当て、ゆっくり、ゆっくりとカカシの中へと指を挿し入れる。
湯のぬめりが手伝って、そこは存外スムーズにイルカの指を受け入れた。イルカは、いつもカカシが自分にしてくれるように、慎重にそこを解しながら、カカシの悦い所を探す。だが、なかなかカカシのようにはいかない。
「辛くないです?」
「…っ、ん…だい、じょぶ…。ね…もう、指、増やしていいよ」
イルカは躊躇いながらも指を増やし、ゆっくりと抜き差しする。その動きにカカシの体がヒク、ヒクと応える。カカシの頬は、いつになく上気している。湯のせいばかりではないだろう。
カカシは桜色に染まった頬を、ゆったりと緩めて笑む。
「イルカ先生、雄の顔してる。せんせのそういう顔…すっごく、そそるね」
「だといいんですが…」
「ホントだよ。オレ、せんせのその顔だけで、達っちゃいそう…」
カカシの吐息が熱い。抱いているのに、俺の方が喰われているみたいだとイルカは思う。それでもいい。どっちだっていい。この愛しい人と体を繋げ、一番無防備な姿を曝け出して、溶けあって。
やがてカカシのそこが、難なくイルカの指を受け入れられるほどに柔らかくなる。ああ、早く繋がりたい。
イルカが硬くそそり立った芯を、カカシのそこに宛がうと、カカシは自ら腰を落として、イルカのそれをすっかり飲み込んでしまった。カカシに締め付けられる感覚に、イルカは小さく呻いた。カカシもまた、掠れた声をあげる。
「…っ、ふ…ァ…」
「だ、大丈夫ですか?」
「ん…気もちぃ…」
そう言って、カカシは自ら腰を揺らす。まるでイルカの精を吸い上げようとするように。カカシの後ろに見える満開の枝垂桜と相俟って、まるで桜の精のようだ。
「ね…せんせの、ちょうだいよ」
カカシが、妖艶に微笑む。ああ、やっぱり俺が喰われるのか。
そういえば、桜の下には人が埋まっているという。人が桜に取り込まれるように、俺もこの人に取り込まれるのか。
そうしてこの人の奥深くに入り込んで、絡み合って、ひとつになれたなら。
「ええ、あげますよ。全部」
カカシが、嬉しそうに目を細める。
二人の唇が、深く、深く、重なった。
- レピドプテラ
昼日中の屋外だと思うと燃え滾りました、えっち!
穏やかで温かな二人の愛を感じました、末永く幸せに暮らしてほしいです。
ありがとうございました!