毎回遅刻の高井田です。
「企画した側が不参加だったり、毎回遅刻してる…」という、極めてゆるゆるな募集ですので、良かったらお付き合いいただけますと泣いて喜びます。



なぞる手つきの温かさ

自分で言うのもどうかと思うけど、小さい頃からモテる方だった。
幼児期から思春期頃までは、好意のこもった目線だろうと好奇の目だろうと違いはなく、一律で煩わしい物だと思っていた。
思春期に差し掛かった頃には、それに輪をかけて弊害とも言える「あの子がお前を好きだ」といった俺をトロフィーとした争いが増えて、正直恋愛を楽しむ前に恋愛にまつわるいざこざで辟易していたから、恋愛なんてクソ食らえと適当に付き合ったのがイルカ先生だ。
馴れ初めというか、きっかけは本当に適当だ。
飲み会の席でたまたま俺の前に運ばれてきた鰻をイルカ先生があまりに物欲しそうに見てたから、同じものを頼んだだけだ。
いたく鰻の美味さに感震した先生が「こんなウマイものを躊躇うことなく他人に与えられるとは素晴らしい」などと宣い、改めて運ばれてきた2膳目にやるとも言ってないのに勝手に俺の分まで食いきり、「あなたにならば殺されてもいい」などと物騒な事を言うに至り、適当に聞き流していたら適当に誰かによってくっつけられ、イルカ先生も適当にかわしたものの逃げられなかった。
だから別に何てこともなかった筈だし、酔いが覚めたら終わりと思っていたのが、腐れ縁とでも言うのか切れることなく続いている。


別に誰でも良かったとか以前に、俺も先生も付き合うつもりなんかはこれっぽっちもなくて、でも飲み会で周りが勝手に盛り上がったせいでか、なかなかどうにもならなくて。
まぁ噂なんて半月かそこらもすれば落ち着くでしょうと、人目を避けるために互いにそれぞれ家で飯を食ったりしていたら、それが余計にアヤシイだとかで、世間の噂で俺とイルカ先生は熱烈な相思相愛であり、食事は二人で隠れてしているだとかなんだかだそうな。
個食。
完全に俺と先生はお一人様。
お一人様がお互い自室に一人。
時間が被ってるだの、確かめた者がいないから否定はできないだとか、完全に悪魔の証明となっていた。
まぁ、周りも暇だったんだろう。
何をしても何をしなくても俺と先生は付き合ってることにされるんだから、諦めて外で顔を会わせれば飯くらいはいくようになった。
そして周りの無理矢理な態度に愚痴ったり、笑ったりとしているうちに、まぁ週末ですし家で一杯となり、それが平日にもなり、嫌ではないなと気がついたら世間の恋人というナニカシラは一通りこなした。
これは俺が抱く方だから?と、役割を入れ換えてみても何故か不思議と違和感もなく、お互い気が向いた時に気が向いた方でボチボチと営んでいる。


「せんせ里外任務ったって、アカデミーの遠足じゃないですか」
「里に出れば里外任務です。それに子供なんて一瞬目を離した隙にとんでもないことをしでかすから、結構大変なんですよ」
里外任務に出た相手を労るために、帰還後の最初のセックスは里外任務者の希望が優先される、なんて俺が外に出る方が圧倒的に多かった時代は既に過去。
火影となった俺は外遊こそあれ、それは長期になる事も多くて、今更ながらこのルールに若干不満である。
どれだけ遠くで長期だろうと、二時間ばかりで帰ってこられる隣町への使いっ走りだろうと、里外は里外であり、一回は一回だ。
「ずるい」と不満を漏らしたところで、過去の俺だってそうしていたんだから、仕方ない。
俺の上で汗を滴らせながら、「ルールですから」と楽しげにのしかかってくるイルカ先生の頬へ歯形を付ける。
くつくつと先生が笑うものだから、俺の中に入った先生が小刻みに揺すられて気持ちがいい。
気持ちがいいのと、抱かれる回数が一方的に増えることへの不満を秤に乗せてみたら、若干不満に傾きつつあるものの、どうしようもなく愛しげに見つめてくる黒い目のせいで「しょうがないか」と諦めが来てしまう。
最初の頃の不安げな眼差しはすっかりと成りを潜め、当たり前の顔をして俺へと触れる手指の熱に、こんな付き合いも悪くないなと抱き返した。

※付き合ってない
  • レピドプテラ
付き合ってないの!?って、最後にマジで声が出ましたwww
最高です、ありがとうございます。絵文字入れられないの、意外とつらいですね。涎垂れたいです。
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